かかりつけ医に行く日の朝には「テレビ体操はできそうもない」と言う。どちらにしろ病院に行くから体力温存したほうがいいだろう。
けれど「お腹が空いた」と言って、高栄養ゼリーを半分食べた。
これまで、ゼリーは一口くらいしか食べられなかったが、少したくさん食べられた。
「病院に歩いていける?」と聞くと「わからない」と母。
前日、私の夫に状況を話していたので、急遽休みをとってくれ、病院へ付き添うことになった。
体の左右を二人で支えれば、なんとか歩けるようだ。
自宅から車で2〜3分の病院に到着し、病院で車椅子を借りる。待ち時間に座っていられるかどうか心配だったが、大丈夫だった。
かかりつけの先生は開口一番「なんで国立病院を退院したの?」
父が代わりに「24時間点滴が辛かったから」と答える。
「国立病院の先生も言われたと思うけれど、食べたあとにまっすぐ座っていれば吐き気も少ないはず。点滴以外に治療方法はない」と言う。たいしたことないのに、なんでこの人はこんなに弱ってるんだ?という感じだった。
私が「ぜんぜん食べられてないんですが、いつまで持ちますか?」と聞くと血液検査などをしてくれると言う。
先生が「治療は国立病院と同じで点滴になるけど、それでも入院希望?」と母に聞くが「わからない」と答えるだけ。
「介護認定は?」と聞かれたので「いま申請してますが、一ヶ月以上かかるらしいです」と答えると「そんなに?」と先生も驚いたようだった。この状態で家に戻すのはまずいと考えたのか、「じゃあ入院して、24時間点滴じゃないようにしましょう。リハビリも少し入れてみましょう」と言ってくれた。
ケアマネさんから、退院してから一週間は介護認定が受けられないと聞いていたので、そのことを尋ねてみると「それはない」と言う。どっちが正しいのかわからないが、ここは病院を信じてみる。
母は延命治療を望まないことを文書にしていたので、それを先生に見てもらった。先生は母が治ると思っていたらしく、一通り目を通しただけで、「これは大事なものだからしまっておきましょう」と返してくれた。
入院する方向で話はまとまり、母は検査を受けるために看護師に連れられていった。
その間に私たちは母のこれまでの経緯や既往歴を聞かれた。几帳面な母はおくすり手帳にこれまで手術したことなどを日付とともにメモしていたので、かなり正確に看護師さんに伝えることができた。
入院時には国立病院とは違い、準備しなければいけないものがあった。
・タオル数枚
・バスタオル数枚
・プラスチックのコップ2つ
・歯ブラシ
・くし
・肌着
病衣は1日90円でレンタルでき、洗濯は3日に1回685円でお願いできるらしい。
そのほかに「のどが乾くみたいだから、OS1を差し入れてください」と看護師さんに言われた。
そうこうしているうちに、あらかたの検査が終わったようで、検査結果の説明が先生からあった。若干の水分不足、ナトリウムの不足などがあるものの栄養状態は悪くないとのこと。
「点滴しても吐くんですが...?」と聞くと、「点滴で吐くことはないんですけどね」との答え。私の夫曰く「点滴は血の中に入って胃とは関係ない。だから吐くはずはない」とのことだったので、「気分のせいですかね?」と尋ねると「そうかも」と言われた。
家に戻って入院の準備をしていたら「入院用」とメモ書きしてあるビニール袋があった。洗面器など、入院に必要と思われるものが入っていた。いつかはわからないが、ずいぶん前に母が準備していたようだ。
昼食をとってから病院に向かい、準備したものを渡す。疲れが出たのか、昼寝をしてしまった。
起きるとスマホに着信がある。どうやら病院からのようで、急いで電話するとバスタオルとタオルを追加で持ってきて欲しいとのこと。バスタオル2枚とタオル3枚では不足だったようで、追加でバスタオル2枚とタオル3枚を持っていく。「数枚」と書かずに最初から枚数を指定してくれればいいのに、と思う。
さらに、延命治療を望まないという文書のコピーを取りたいとのことで、それも持参した。
その間に市の介護認定調査から連絡があった。「入院されたらしいですね」「はい、でも介護認定が受けられると聞いたんですが。A病院に入院中です」と答えると「ああ、わかりました。ではA病院と調整しましょう。ご家族の方の立ち会いは必要ありません」とのこと。
確かなことはわからないが、A病院は介護医療院が併設されているので、入院したまま介護認定が受けられるのかもしれないと思った。